2016年に2BRO. 兄者さんによるBanishedのゲーム実況を視聴して以来、街づくり系のゲームに興味を持ってはいたのですが、始める機会がなく時が経つばかりでした。
しかし、2021年8月11日にBanishedと似た雰囲気の街づくりゲーム『Patron』がリリースされたことを知り良い機会だと約5年越しにプレイしてみることに。
結果、初心者でも遊びやすい満足度高めのゲームだと思いましたので、この記事ではPatronについて初心者目線でレビューしていきます。
『Patron』の基本情報
開発元・販売元 | overseer games |
公式サイト | City Builder | Patron |
販売サイト | Steam : Patron |
リリース日 | 2021/8/11 |
プラットフォーム | Microsoft Windows |
ジャンル | 街づくり、シミュレーション、ストラテジー |
言語 | 日本語(インターフェイス、字幕) |
建築と政治を楽しむシミュレーション・ストラテジー
『Patron』は、クロアチアのOverseer Gamesによる、ソーシャル・ダイナミクス(社会動態学)1の要素を取り入れたサバイバル街づくりシミュレーションです。人々は母国の発展のため、新たな土地を開拓すべく様々な環境の土地へ植民します。プレイヤーは、街の指導者として島の開拓を行う中で建築物や農地を用意したり、住民が快適に暮らせるよう幸福度の向上に努めます。幸福度を向上させるには税金、階級、移民、治安、健康、宗教、忠誠心といった社会課題に向き合う必要があります。
指導者として、街づくりを建築と政治という二つの面から楽しむことができるゲームとなっています。
ゲーム開始時に植民先の環境(難易度含む)を細かく指定することができます。植民先である島の環境は「難易度」「土壌肥沃度」「鉱物の豊かさ」「天候」の4項目から決定します。各島ごとに4項目に違いがあり、プレイヤーは自身のお気に入りの島を探すことができます。また、島を決定した後には、さらに細かな設定も可能です。
- ソーシャル・ダイナミクス(社会動態学)とは、社会の構造と文化を動態という側面から研究する学問分野。 ↩︎
美しいビジュアルとBGMに満たされる
中世ヨーロッパのイメージで作られた本作では、作曲家Nikola Jeremic氏により作られた壮大優美なサウンドトラックが採用されています。個人的に、このBGMがかなりお気に入りです。ゲームに熱中してしまう大きな要因になっていると思います。
PATRON SUPPORTER BUNDLEでは、サウンドトラック及びサポーターバンドルがセットとなっています。懐に余裕があるならおすすめです。
街づくりゲームの入門としては正解であると感じた
全体的にUIがわかりやすく、操作マニュアルPDFも付属している
直感的に操作できるUIはゲーム体験に良い影響を与えます。新たなジャンルのゲームをプレイする際には操作方法で悩むことがありますが、PatronのUIは非常にシンプルで説明も簡潔であるため、ゲームの進行に合わせ次は何をすべきか初心者でも答えを出すことが容易でした。
またゲーム設定画面から、操作マニュアルを含むPDF(英語)を読むこともできます。YouTubeには開発者によるゲーム攻略のヒント動画もあります。
ビジュアルやBGMの完成度が高い
見た目から入る私のようなタイプには、ビジュアルやBGMの完成度が高いことは重要です。
その点でPatronは、Release Trailerを視聴された方はわかるかと思いますが、各オブジェクトのテクスチャがとても丁寧に作り込まれています。シェーダーの具合も良く、天候の変化に合わせて変化する陰影処理にフォトモードでの撮影が捗ります。また世界観とマッチしたBGMは、リアル時間の経過を忘れさせます。
序盤でゲームの進行方法が理解できる
本作は序盤・中盤>終盤といった感じで難易度が遷移します。そのため初心者はとりわけ序盤に苦戦を強いられます。例えば食糧難や木材難など。これは一見すると初心者殺しのように感じますが、序盤での苦戦であれば、再度島の選択からやり直すことで修正を利かせることが容易です。セーブデータが積みあがってきた中盤から終盤にかけて再スタートを切らなくて良いように、島の開拓においては何が必要で、どのようにバランスを取ると良いのか、序盤で知れるのは運営側の優しさではないでしょうか。
細かく難易度調整が可能なため、自分に合った環境を構築しやすい
前述しましたが、本作は自分が遊びたい島の初期値では環境難度が高くとも、島を選択後に難易度の変更が可能であるため、この地形で遊びたいのに難しいから遊べないというジレンマとは無縁です。街づくり系のゲームを初めてやる場合でも、好きな島を選びやすいゲームだと思いました。
『Patron』レビューのまとめ
本作は現代社会が抱える問題点を反映したゲームとなっています。労働階級や移民問題、これらを含む税金問題、それに治安や健康、そして宗教や帰属意識といったソーシャル・ダイナミクス(社会動態学)の要素が全面に詰め込まれていました。正直なところ、もう少しこのソーシャル・ダイナミクスに時間毎の変化が見られればと思いもしましたが、全体のバランスという意味では最適なのかもしれません。終盤になって新たな問題が多発するようだと街づくりが困難ですしね。
そんなわけで総評としましては、街づくりゲームの入門として最適なタイトルだと思いました。
慣れたら難易度を調整することで新しい楽しみ方をすることができますし、ひたすら一つの島の景観創りに拘ることもできます。夢中でプレイして一度飽きて離れたとしても、ふとした時に遊びたくなる。そんな魅力も兼ね備えたゲームでした。
是非遊んでみてはいかがでしょうか。
ゲーム序盤の進め方
以降では、実際にPatronをプレイしてみて私なりに思った本作の進め方について紹介します。街づくり系ゲームを始めて遊ばれる方の一助になればと思います。
※未プレイ時に攻略情報を見たくない方は飛ばして下さい。
資源(木材、食料、コイン)不足に注意
資源不足に注意して下さい。資源が不足すると街の運営が立ち行かなくなります。特に重要な資源は木材、食料、コインだと思います。
木材は施設の建設や維持に欠かせません。また、島の住人は年中自宅で薪を使用します。冬場などの気温が下がる時期は特に消費量が多いため、気温がある程度高い時期に薪をストックしておく必要があります。もちろん薪は木材を加工して作られるため、木材が不足するということは薪の供給が滞るということであり、これが回りまわって島の住民の死に繋がります。
食料不足はイメージが付きやすいかと思います。食材の不足が起きると住人は飢えてしまい、死に繋がります。食料は様々な種類がありますが、島の環境により入手困難なものも存在します。初心者の方は、島を選択する際に土壌肥沃度が好条件の島を選ぶのをおすすめします。
コインの不足は時として街の運営に影響を与えます。木材や食料の不足ほど影響はありませんが、施設の建設や維持費にコインを使うことができなくなります。特に船着き場を建設して島外と取引が可能になるまでの間は自由にコインを手に入れることが難しいため、計画的に運用する必要があります。
施設は必ず隙を見て強化すべし
同じ施設を増設するよりも先に既存施設の強化を行いましょう。
一部の施設は「同一施設が隣接していることで生産量などの施設機能が向上する」といった特徴を持つ場合があり、このような施設の場合、同時に複数建設を行う場合もあるかと思います。しかし、基本的には1つの施設を建てたら、増設するよりも前に強化を優先することをおすすめします。
施設強化は主に2種類(維持費削減、生産量増加)あります。このうち維持費に木材を大量に使用する施設は、早い段階で維持費削減のための強化を行うことをおすすめします。維持費に木材が大量に使われる状況が長く続くと、前述したように木材の貯蔵量が少なくなり、冬季の薪貯蔵にも影響が出るからです。
家庭での石炭消費は辞めさせると良い
炭鉱を建設して石炭の生産を始めたものの貯蔵量がなかなか増えない。この原因は石炭の家庭内消費にあります。
島の住人は薪と同じく石炭を年中使用します。しかし、序盤では薪の生産量と比較して石炭の生産量は少なくなりがち(人員を割けないため)です。そのため、薪は使用されても貯蔵量は増えるのに石炭は増えないという現象が生じます。石炭は鍜治場などで使用される割と重要な資源であるため、家庭内でのみ使用され、施設で利用できない状況は望ましくありません。
そこで、石炭の生産を始めたら各家庭で石炭が消費されないようにロックを掛けることをおすすめします。資源のロックは倉庫内メニューから行うことができます。
資源や倉庫の貯蔵量に注意
本作では、物資倉庫を建設して物資の貯蔵を行います。役場をアップグレードすることで「物資置き場」→「倉庫」→「大きな倉庫」の順に建設が可能となります。各倉庫には貯蔵上限があり、上限の影響で貯蔵できない物資が生じる場合には、物資倉庫を複数建設や既存倉庫をアップグレードすることで上限を増やします。
なお物資倉庫の中身は各倉庫施設をクリックすることで確認でき、倉庫内の各物資を選択することで年間の需要供給量を棒グラフで見ることができます。
さて本題ですが、なぜ資源や倉庫の貯蔵量に注意が必要なのか。
基本的に倉庫は、貯蔵量上限を迎える前にアラートが鳴り「もう少しで倉庫の上限を迎えます」といった内容の通知が届くので、このタイミングで倉庫の増設やアップデートを行えば問題はありません。しかし、倉庫の建設にはコインに加えて、木材・石材・鉄・レンガなどの素材が必要であり、これらの素材の枯渇と倉庫上限のタイミングが重なると、倉庫の増設やアップデートが容易にできない場合があります。
また気温が低下する時期に木材不足が重なると、切り倒した木材はすぐさま薪の生産や建物の維持に使用されてしまい、木材の貯蔵量が増えにくくなります。この状況で倉庫上限を迎えると、切り倒した木材の貯蔵する場所がないわけですから、木材が増えないどころか薪の生産や建物の維持が困難になり、既存の環境を維持することが難しくなります。当然、木材が増えないと倉庫が建てられるはずもなく、負ののスパイラルとなります。
正直このような状況に陥ることは稀だと思いますが、頭の片隅には留めておいた方が良いかと思います。
ワーカーが居ないと世界は回らない
ワーカーは建築物の資材運搬や建築、樹木の伐採や鉱石の採掘、また各種生産施設で必要となる資材の運搬を行います。そのため、一定数のワーカーが常に確保されていないと街の運営が徐々に難しくなります。
ワーカーにはある程度の人材を割く必要があるので、残った人材は必然的に必需品(資材や食料)生産職に回さねばなりません。これにより贅沢品生産職や治安維持を行う衛兵職における人材確保は優先度を下げる必要があります。しかし、これらの職業は住民の幸福度パラメーターに影響を与えるためお座なりにはできません。
「ワーカー」「必需品生産職」「他の職業」の3つに人材をバランスよく振り分けることが重要です。
土壌肥沃度が「高」かつ、雪が降る気候帯の島は景観を楽しみやすい
ゲームの進め方とは少々方向性が異なりますが、せっかくゲームをされるなら楽しんでもらいたいということで、最後に個人的なおすすめの島の選び方を紹介します。
初めに島を選択する際のおすすめの島環境は、土壌肥沃度が「高」かつ、雪が降る気候帯の島です。
土壌肥沃度が「低」の島では農業の効率が落ちてしまう、また農業を行える場所が限られるという問題が生じます。農業を行える場所が限られるという点は食料自給率が下がること以外にも問題があり、例えば、秋の稲穂が作り出す美しい景観を設置できる場所が限定されてしまったり、果物などの樹で彩りを与えられる場所が限定されたりと、島の景観にも影響を与えます。
また同様に雪が降らない気候帯の島では、冬季の雪景色を味わうことができなくなります。
このように土壌肥沃度と気候帯は島の景観に影響を与えるため、初めは土壌肥沃度が「高」かつ、雪が降る気候帯の島を選択されることをおすすめします。
以上、ゲーム序盤の進め方についてでした。
おまけですが、島の環境設定にはデフォルトで多くのパターンが存在します。本作はMap Editorの機能があり、こちらONにすることで自分が望む地形を作り出すことも可能です。公式から簡単なチュートリアル動画も出ていますので、ゲームに慣れてきたら味変として試してみてはいかがでしょうか。