人工知能 (AI) や機械学習の発展に伴い注目を集めているプログラミング言語がPythonです。高度な用途で用いることができる一方で、インタプリンタ型(人間が記述したソースコードをコンピュータが実行できる形に逐次翻訳しながらプログラムを実行すること)であるために可読性が高く、また文法がシンプルであるため、初学者が最初に学ぶプログラミング言語としても適しています。
このページでは、Pythonの特徴や歴史、活用事例、学習方法などについて紹介しています。
Pythonとは
はじめにPythonの特徴や歴史について紹介します。Pythonがどのようなプログラミング言語であるかを知るヒントになればと思います。
特徴について
- 文法がシンプル
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Pythonは、プログラムの読みやすさとわかりやすさを重視することで、Pythonを知らない人でも理解できるようにデザインされています。これによりPythonは、他のプログラミング言語と比較してシンプルな文法で動かすことができます。例えば変数を宣言する際に、
int
やstring
を変数の前で宣言する必要がありません。シンプル故に簡単なプログラムしか書けないということはなく、むしろPythonはとても高度な機能を豊富に備えているため、昨今注目されている人工知能 (AI) や機械学習などの用途でも重宝されています。
- 可読性が高い
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人間は、人間がわかる言葉(人間語とする)でプログラムを記述します。記述されたプログラムの塊をソースコードと言います。プログラムを実行するには、このソースコードをコンピューターが理解できる言葉(機械語)に翻訳する必要があります。
翻訳する方法は2つあり、一つ目の方法はソースコードをまとめて翻訳する方法です。これはコンパイルと言われます。二つ目の方法は、ソースコードをコンピュータが実行できる形に逐次翻訳する方法です。これはインタプリンタと言われます。
プログラミング言語によって採用している方法は異なっており、Pythonはインタプリンタを採用しています。Python以外でインタプリンタを採用しているプログラミング言語としてはHTMLやCSS・Ruby・Python・JavaScript・PHPなどがあります。これらをインタプリンタ型言語と言います。
インタプリンタ型はソースコード逐次翻訳して実行するため、作成したプログラムの実行結果を確認しやすいというメリットがあります。これはデバッグ(プログラムの誤りを探して修正する作業)も行いやすいということです。
またPythonでは、オフサイドルールに基づきインデント(行頭の字下げ)が強制されるため、スコープ(ソースコード内の変数や関数が利用できる範囲)などの判別が行いやすいという特徴もあります。
これらの理由から、Pythonは可読性が高い言語とされています。
- ライブラリやフレームワークが豊富
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Pythonには、プログラムの開発で利用できるライブラリやフレームワークが豊富に用意されています。
ライブラリとは、特定のタスクや機能を実行するための再利用可能なコードの集まりです。フレームワークとは、特定の種類のソフトウェアを開発するための基盤や骨組みです。
特にPythonでは、科学技術計算向けのライブラリが多く提供されています。これにより難解なコードを全て自作せずとも、人工知能や機械学習といった分野の開発を迅速に行うことが可能になっています。
歴史について
Pythonは、オランダ出身のプログラマーであるグイド・ヴァンロッサム氏によって開発された、オープンソースで運営されているプログラミング言語です。Pythonという名前は、イギリスのコメディグループ「モンティ・パイソン」から取られています。グイド氏はこのグループのファンで、言語の名前を彼らのショー(空飛ぶモンティ・パイソン)にちなんで命名しました。
グイド氏は、1990年代初頭からPythonの開発を始めており、Pythonの最初の公式バージョンであるPython 1.0は、1994年1月26日にリリースされました。
その後、Python 2.0が、2000年10月16日にリリースされました。Pythonはこのバージョンから多くの機能が追加され、人気のプログラミング言語となります。しかし、Python 2.7がこのシリーズ最後のメジャーリリースとなりました。その後も長い間サポートされていましたが、2020年を持ってサポートが終了しました。
Python 3.0は、2008年12月3日にリリースされました。このバージョンの登場は、Python 2.xとの後方互換性を断ち切る大きな変更であったため議論を呼びました。しかし、Python 3.xは現在もアクティブに開発されており、多くの新機能や改善が継続的に加えられています。
Python 1.0の登場から現在にかけて、多くの変更と成長を遂げてきたPythonですが、シンプルさやコードの読みやすさという基本的な哲学は変わっていません。
Pythonの活用事例
続いてPythonの活用事例について見ていきます。ここでは「人工知能・機械学習」「科学技術計算」「データサイエンス」「アプリケーション」「ルーティンワークの自動化」という見出しで取り上げます。
人工知能・機械学習
Pythonは、人工知能 (AI) や機械学習の分野で重宝されています。
2006年に、コンピュータ科学と認知心理学の研究者であるジェフリー・ヒントン氏らによりディープラーニングが発明されると第三次AIブームが起きました。この際、機械学習を実現するためのプログラミング言語として注目されたのがPythonです。この理由として、Pythonは機械学習向けのライブラリが豊富なことが挙げられます。
活用事例として以下のようなものが考えられます:
- 自然言語処理:spaCyやNLTKを使って、テキスト分析、感情分析、機械翻訳などを行う。
- 画像認識:OpenCVやPILを利用して、画像処理や顔認識などを行う。
科学技術計算
科学技術計算とは、科学や工学の問題を数値的に解くための方法や技術のことを指します。これには物理や化学、生物学などの実験や観察から得られたデータの解析や、特定の現象を数学的にモデル化してシミュレーションを行うことが含まれます。
このような分野においてもPythonは頻繁に利用されています。
Pythonはスクリプト言語であるため、この分野で使用されるFortranやC言語と比較すると高速な計算が行えるわけではありません。しかし、Pythonでは、FortranやC言語で開発された高速な処理を組み込んで利用することができます。これにより、プログラミングを専門としていない人でも、Pythonの手軽さを活かして科学技術計算を行うことができます。
活用事例として以下のようなものが考えられます:
- 天気の予報:大気の状態や物理的な法則を用いて、未来の天気を予測する。
- 橋やビルの設計:物理的な法則や材料の特性を用いて、構造物の強度や安全性を確認する。
データサイエンス
データサイエンスとは、大量のデータから有用な知識や情報を引き出すための学問・技術のことを指します。この分野では、統計学、機械学習、データマイニングなどの技術が活用されます。
このような分野においてもPythonは頻繁に利用されています。
科学技術計算も同様ですが、Pythonがこのような分野で活用されるのは、データの分析や可視化を行うための専用のライブラリやフレームワークが豊富に用意されているためでもあります。
活用事例として以下のようなものが考えられます:
- 推薦システム:顧客の過去の購入履歴や閲覧履歴を基に、次に気に入るであろう商品を推薦する。
- 顧客セグメンテーション:顧客のデータを分析し、似たような行動や嗜好を持つグループに分けることで、マーケティング戦略を最適化する。
アプリケーション
Pythonが使われていて馴染みのあるサービスとしては、YouTube・Instagram・Netflixなどでしょうか。
Pythonには、Webアプリケーションの開発に便利なライブラリやフレームワークも豊富にあるため、このような大きなサービスでも頻繁に使用されています。Python使用者の23%はWeb開発にPythonを使用しているというデータもあります。
Pythonのフレームワークとして一番聞き馴染みがあるかもしれないDjangoやFlaskも、Webアプリケーションの開発で人気のフレームワークです。
ルーティンワークの自動化
本屋でプログラミング関連の書籍を眺めていると、Excel作業をPythonで自動化というようなワードを目にすることがあるかと思います。このような書籍ではPythonのライブラリでExcelを操作するopenpyxl(オープンパイエクセル)というものを使用しています。
WebスクレイピングもPythonならSelenium(セレニウム)というライブラリを使用することで簡単に実装できます。
Pythonの用途というと人工知能・機械学習、科学技術計算やデータサイエンスなど難しい用途が目立ちますが、実際はこのような日常作業の自動化という用途でも使用することができます。また、Pythonは学習難度が低い言語であるため、プログラミングを専門としない人々が、日常作業の効率化を求めて使用するのに適したプログラミング言語といえます。
Pythonの将来性
「作りたいものがあり、それを作るのにPythonが必要なため学ぶ」というならばともかく、「何となくPythonを学んでみよう」「何となくプログラミングを学んでみよう」という場合は、そのプログラミング言語の将来性について考えることも重要です。
人工知能・機械学習への注目が集まるに比例して、Pythonの人気は上昇しています。実際にプログラミング言語の国際的な人気指標であるTIOBE Indexによると、2023年9月時点でPythonの人気は1位となっています。2位のC言語ともRatingsで差が開いていることがわかります。
また、機械学習の主要なパッケージであるGoogleのTensorFlowやFacebookのPyTorchなどは、Pythonを利用したパッケージとなっていることから、暫くの間はこの順位が変わる、Pythonが廃れるというようなことは起きないと考えます。ただPythonライクな新言語(JuliaやMojoなど)が台頭する可能性はあります。実際にPythonの人気は2018年以降右肩上がりです。
「他に学びたいプログラミング言語がある」というわけでなければ、取り合えずPythonを学習してみてはいかがでしょうか。
Pythonを学ぶ
学習方法について
学習方法は大きく分けて3種類「学習サイト」「書籍」「有料サービスなど」がありますが、Pythonをこれから学ぶ方、またプログラミングを学ぶことすら初めてという方には、ぜひお金を無駄に使わずに頑張って欲しいと思います。
ネットで「Python 勉強」などと検索すると数々の有料サービスが検索にヒットすると思いますが、Pythonの入門部分を学ぶのにお金を使う必要はありません。無料のもので十分です。有料サービスによってはメンターが付く、わからないところを質問できるなどのメリットがありますが、入門程度の内容であれば検索して出てこないということはあり得ません。まずは調べながらやってみましょう。
プログラミングをしていると必ずどこかで自分で調べ考えて解決しなければいけない壁に当たります。やっていることの難易度が上がるほど答えを出すことが難しくなります。ですので早いうちから調べて考えて解決するということに慣れてください。
このサイトでも「Python 入門」というタイトルでコンテンツを無料で提供しています。管理人が遅筆であるため全て完成するのはいつになるかわかりませんが、まずこの記事を読まれているのであればご覧になってはいかがでしょうか。
もちろんこのサイト以外にも、無料で素晴らしいサイトは沢山あります。以下などはおすすめです:
サイト名 / ページ名 | 説明 |
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ゼロからのPython入門講座 | 日本Pythonコミュニティ(プログラミング言語 Python 総合情報サイト)によるPythonの入門講座です。 |
マナビDX | デジタル庁が、デジタル人材育成のために解説しているサイトです。審査を通過したコンテンツのみが掲載されています。検索バーで「Python」や「Python 入門」と入力して検索、左サイドバー「受講料→無料→絞り込む」で無料のコンテンツを表示できます。 |
書籍が必要な場合
書籍を購入してプログラミング言語を学ぶことのメリットは、網羅的に学べること、複数人の目でチェックされた後に出版されているため内容の精度が高いこと、良書に出会えればそれは長く付き合える資産になるということなどが挙げられます。
入門という意味では無料の学習サイトで十分だと思っていますが、私自身も書籍を読むことが好きで、プログラミング系の技術書はよく手に取ってしまいます。
しかし、書籍を購入するには当然のことながらお金が掛かります。またPythonに限らず、プログラミング言語は定期的にアップデートされていくため、言語側のアップデートに書籍が対応していない場合があります(発行年度が古いなど)。購入する場合にはよく吟味されることをおすすめします。
書籍を探される際の一助になるかもしれませんので、執筆時点において良さげなものを紹介しておきます。
さいごに
現在最も人気の言語、Pythonについて紹介してきました。
Pythonは現在の需要に加えて将来性もあるプログラミング言語です。ライブラリやフレームワークが豊富なことで様々な用途で使用することができます。これは、Pythonを学べば、様々なフィールドで活躍できる機会が得られるということです。
ぜひ、この機会にPythonの学習を始められてはいかがでしょうか。
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